本郷新とテラコッタ

本郷新は、1965年に小樽市春香町の石狩湾を見下ろす山麓に、アトリエを建てました。東京世田谷のアトリエとは別に、野外彫刻などの大作を完成した後の休息の場、あるいは故郷に戻ったときの拠点として構想されました春香のアトリエでは、ふるさと北海道の仲間と親交を深め、趣味の釣りを楽しみ、その一方でテラコッタを作っています。

春香のアトリエで制作したテラコッタの作品は、自由奔放な遊びの感覚に溢れています。ロダンなどの近代彫刻に影響を受けながら彫刻家として歩んできた本郷ですが、「木や土を扱うと日本的で原始的な意識が働く」と語っています。できあがったものは、子供の粘土遊びのように、無心に楽しみながら作られたような作品ばかりです。粘土を捏ね、のばし、はりつけ、思いつく全てのことを試しているテラコッタの作品は、人体を表現するブロンズ像とは違い、ユニークで独創的です。

テラコッタは、北海道の硬質の土を用いて1,100度の釜で焼いています。本郷は、「テラコッタというものは、もっとその人の持つべき、あえて持つべきといってもいいだろうけど、むきだしの素朴で強い、そこへいきたいですね。」と語っています。

初めこそ気軽な思いでテラコッタの小品は作られていましたが、1966年には「北方シリーズ」として発表され、1969年には「土と火の祭り」がテラコッタ作品の集大成として完成されました。